情報ラボ > 問題解決の手法
アイデアを出して整理し、原因を深掘りし、解決策を比べて選ぶ。調べるためのアンケートも、作り方しだいで結果が変わります。問題解決で使う道具を、実際に手を動かして使ってみましょう。
付箋をドラッグして動かします。指でも動かせます。付箋をタップして選んでから、移したい枠をタップしても移動できます。
合計 =(点数 × 重み)を、すべての基準について足したもの。重みを 0 にした基準は、計算に入りません。
| 尺度 | 例 | 区別 | 大小・順序 | 差(間隔) | 比(何倍) | 使える代表値 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 名義尺度 | 血液型、好きな教科 | ○ | × | × | × | 最頻値 |
| 順序尺度 | 順位、5段階の満足度 | ○ | ○ | × | × | 最頻値・中央値 |
| 間隔尺度 | 気温(℃)、西暦の年 | ○ | ○ | ○ | × | 最頻値・中央値・平均値 |
| 比例尺度 | 身長、冊数、時間 | ○ | ○ | ○ | ○ | 最頻値・中央値・平均値 |
名義尺度・順序尺度は質的データ、間隔尺度・比例尺度は量的データです。下の尺度ほど、できる計算が増えます。比例尺度は「比尺度」とも呼ばれます。
問題解決でいう「問題」は、テストの問題のように答えが1つに決まっているものだけではありません。文部科学省の「情報Ⅰ」教員研修用教材では、問題という言葉を「あるべき理想の姿と現実とのギャップ」や「解決や解消を必要とする状況」という意味で説明しています。たとえば「図書室を利用する生徒が少ない」が現実で、「多くの生徒が図書室を使っている」が理想だとすると、その差が問題です。
同じ教材では、ゴール(理想の姿)やそこへ着く手段がはじめから示されている問題のほかに、ゴールそのものを自分で決めなければならない問題もあると述べています。「ロッカーの鍵をよく忘れて困っている」という状況なら、どんな状態になれば解決といえるのかを、自分で具体的に決める必要があります。ゴールがあいまいなままだと、何をすればよいかも、うまくいったかどうかも判断できません。だから、問題解決の最初の一歩は、問題を見つけて、はっきりさせることです。
問題解決の進め方は問題の性質によっていろいろありますが、教員研修用教材では、情報科の学習過程のイメージとして次のような流れを示しています。
最後が「次の問題解決へ」になっていることに注目しましょう。振り返りで見つかった課題が、次の問題解決の出発点になります。また同教材は、アンケート調査でどのような問いや選択肢を設定するかによって、結果や効率が変わる可能性があることにもふれています。このページの4つのタブは、この流れの中で使う道具です。
| 段階 | 使う手法 | このページのタブ |
|---|---|---|
| 問題の発見・情報の収集 | ブレーンストーミング、KJ法、アンケート | アイデアを出して整理する/アンケートを作る |
| 問題の定義・分析 | ロジックツリー(なぜなぜ・分解) | 原因を深掘りする |
| 解決方法の探索・計画 | 意思決定マトリクス | 解決策を比べる |
| 実行・振り返り | PDCA サイクル | 解決策を比べる(下の図) |
原因や解決策を考えるには、まず材料となるアイデアをたくさん出す必要があります。そのためによく使われるのがブレーンストーミングです。教員研修用教材によると、アメリカの広告代理店 BBDO 社の A・F・オズボーンが考案した手法で、次の4つのルールがあります。
| ルール | 意味 |
|---|---|
| 質より量 | アイデアの良い悪いは問わず、とにかくたくさん出す |
| 制約を設けない | テーマに関係しそうなことなら、奇抜な発想でも受け入れる |
| 便乗の奨励 | 人の意見を参考に、さらに広げたアイデアも歓迎する |
| 批判の禁止 | アイデアを出す段階では批判しない |
批判を禁止する理由は、批判されると相手が萎縮してしまい、発想の範囲がせまくなるおそれがあるからです。アイデアを「出す」ことと「評価する」ことを分け、評価はあとの段階(意思決定マトリクスなど)でまとめて行います。
アイデアを広げる方法には、ほかにマインドマップがあります。紙の中心にテーマを書き、そこから枝を放射状に伸ばして、思いついた言葉を次々につないでいく方法です。言葉どうしのつながりが線で見えるので、1つのアイデアから連想を広げるのに向いています。
出したアイデアは、そのままでは数が多すぎて全体が見えません。そこで使うのがKJ法です。中央公論新社による『発想法』(川喜田二郎 著、中公新書)の紹介によると、KJ法は著者の川喜田二郎が長年の野外研究の体験から考案したもので、「データそれ自体に語らしめつつ」まとめることをねらった方法です。教員研修用教材では、アイデアをカードに書き、二次元に配置しながらグループにしたり、表題をつけたり、関連づけたりして、新たな解釈やアイデアを生み出す方法の代表例として挙げられています。
教員研修用教材では、アイデアや項目を一定のルールで線でつなぎ、関係を分かりやすく示す方法の例としてロジックツリーを挙げています。問題を左はし(または上)に置き、それを細かく分けたものを右へ枝分かれさせていくので、木を横にしたような形になります。
「図書室の利用者が少ない」→「なぜ?」→「行くきっかけがない」→「なぜ?」→「新しい本が入ったことが伝わっていない」のように、「なぜ」をくり返して原因をさかのぼります。1回目の答えはまだ大まかで、手の打ちようがないことが多いのですが、くり返すうちに「新刊のお知らせを出していない」のような、自分たちで手を打てる具体的な原因にたどり着きます。
「貸出冊数を増やす」を「来る人数を増やす」と「1人が借りる冊数を増やす」に分けるように、目標や問題を要素に分ける使い方もあります。分けるときは、もれなく、ダブりなくなっているかを確かめます。この考え方は、英語の頭文字をとって MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)と呼ばれます。もれがあると大事な原因を見落とし、ダブりがあると同じことを二重に数えてしまいます。
解決策の案がいくつか出たら、どれを実行するかを決めます。教員研修用教材では、2次元の表(マトリクス表)を作ることが、いくつかの解決策を評価するのに使えると述べています。このページの意思決定マトリクスは、行に案、列に評価の基準を並べ、それぞれを点数で評価する表です。
基準によって大切さがちがうときは、基準に重みをつけます。合計は「点数 × 重み」を全部の基準について足したものです。
例の「ビブリオバトルを開く」は、効果 5 点、費用の安さ 4 点、実行しやすさ 2 点、続けやすさ 2 点です。4つの重みがすべて 3 なら 5×3+4×3+2×3+2×3=39 点で、4つの案の中で3位ですが、効果の重みを 5、ほかを 1 にすると 5×5+4×1+2×1+2×1=33 点で1位になります。このように、重みのつけ方しだいで順位が変わります。だから重みは、採点の前に話し合って決め、なぜその重みにしたのかを説明できるようにしておくことが大切です。点数のつけ方にも人の判断が入るので、合計点だけで決めつけず、結果を見て話し合うための材料として使いましょう。
教員研修用教材では、2つの評価項目を縦軸と横軸にとって案を配置し、決めた理由を見えるようにする方法も紹介されています。基準が2つにしぼれるときは、こちらも使えます。
PDCA サイクルは、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)の4つの段階をくり返して、少しずつよくしていく考え方です。教員研修用教材でも、問題解決の手順の例として挙げられています。
評価の段階で比べるためには、計画の段階で「何を、どう記録するか」を決めておく必要があります。総務省統計局の「なるほど統計学園」では、統計を使った問題解決の枠組みとして、問題(Problem)、調査の計画(Plan)、データ(Data)、分析(Analysis)、結論(Conclusion)からなる PPDAC サイクルも紹介しています。
問題の原因や、解決策の効果を確かめるには、アンケートで多くの人の意見や行動を調べることがあります。しかし、質問の書き方しだいで結果がゆがんでしまいます。総務省統計局の資料をもとに、主な注意点をまとめます。
| よくない例 | 何が問題か | 直し方 |
|---|---|---|
| ダブルバーレル質問 | 1つの質問に2つ以上の論点が入っている。片方に賛成で片方に反対の人が答えられない | 1つの質問では論点を1つにしぼる |
| 誘導的な質問 | 権威ある人の発言や世間の見方を前置きにしたり、一方の立場だけを強調したりすると、回答がかたよる | 前置きを中立にし、両方の立場がありうることを示す |
| あいまいな言葉 | 「最近」「よく」などは、人によって受け取り方がちがう | 「この1か月に」のように、はっきりした言葉にする |
| 選択肢の重なり・もれ | 2つの選択肢に当てはまる人や、どれにも当てはまらない人が出る | 選択肢を網羅的(もれなく)かつ相互排他的(重ならない)に作る |
1つだけ選ぶ形式の選択肢は、「網羅的に、かつ相互排他的に」作るのが原則です。数の範囲を選択肢にするときは「30分以上1時間未満」のように「以上」「未満」で境目をはっきりさせ、すべての場合を書き出せないときは「その他」を用意します。質問の順番も回答に影響するので、答えやすい質問から始め、前の質問が後の答えを誘導しないように並べます。
アンケートで集めたデータは、測り方(尺度)によって4種類に分けられます。学習指導要領解説でも、情報Ⅰでこの尺度水準の違いを理解するよう示されています。
尺度によって、使える代表値が変わります。名義尺度は大小がないので、いちばん多い値である最頻値だけが使えます。順序尺度は並べることができるので、真ん中の値である中央値も使えます。間隔尺度と比例尺度は差に意味があるので、平均値も使えます。この対応は、尺度水準を整理した S. S. スティーブンスの1946年の論文の表にも示されています。名義尺度のデータに番号がついているからといって平均を計算するのは、尺度と分析の方法が合っていない典型的な例です。
1時間の授業なら、たとえば「テーマを決めてブレーンストーミングとKJ法 → 大きなグループを1つ選んでロジックツリーで原因を深掘り → 末端の原因に対する解決策をマトリクスで比べる」という流れで、問題解決の一連の手順を体験できます。アンケートのタブは、実際に調査を行う前の確認に使えます。
情報Ⅰ 授業の進め方ガイドでは、この教材を次の授業で使います。ねらい・導入の問い・50分の流れ・確認問題をまとめています。