情報ラボ > 情報システムとデータの流れ
「この住所で間違いありません」を、どうやって証明するのでしょうか。
田中さんが、勤め先に住所の証明を出す場面を考えます。
紙を介さずに、必要な情報だけを確認する方法です。
ただし電子化には、システム障害への備え、なりすまし対策、機器を使えない人への配慮といった課題もあります。
情報を集め、保存し、処理し、必要なときに取り出す。この一連の働きを担う仕組みを情報システムといいます。
身近な例なら、コンビニのレジ(POSシステム)、電車の改札、銀行のATM、学校の成績処理。どれも、データベースとネットワークとプログラムの組み合わせでできています。
ここで考えたいのは、「自分の情報が正しいことを、どうやって相手に示すか」という問題です。
自分で「私の住所はここです」と言うだけでは、相手は信用できません。誰でも好きなことを書けるからです。そこで、第三者に証明してもらうという方法がとられてきました。
住民票がその代表です。役所が「この人の住所はここで間違いない」と証明した紙を発行し、それを提出先に渡します。
この方法には、いくつもの手間があります。本人が役所へ行き、手数料を払い、紙を受け取り、提出先へ持っていく。役所側も、窓口で対応する人手が必要です。
さらに問題もあります。紙は偽造されうること。住所を証明したいだけなのに、本籍や家族構成など余計な情報まで相手に見えてしまうこと。そして、発行した時点の情報で固定されるため、その後に引っ越しても紙は古いままだということです。
システムどうしを直接つなげば、こうした手間の多くがなくなります。
提出先が「この人の住所を確認したい」と要求し、本人が同意し、役所のシステムが答える。紙は介在しません。役所は窓口対応をせず、本人も出向く必要がありません。
そして重要なのは、必要な項目だけを渡せるという点です。住所の確認なら住所だけ。家族構成は渡しません。これはプライバシーの保護として大きな意味があります。
電子的なやり取りには、別の心配があります。データは簡単に書きかえられるという点です。
そこで使われるのが電子署名です。役所が回答に署名を付け、提出先がその署名を確かめます。途中で1文字でも書きかえられていれば、署名の検証に失敗します。
電子署名が保証するのは2つです。本当に役所が発行したものか(本人性)と、途中で書きかえられていないか(完全性)です。紙のハンコより、むしろ強い証明になります。
上のツールで「途中で書きかえてみる」を試すと、検出される様子が確かめられます。
情報システムの中心にあるのがデータベースです。大量のデータを、決まった形で整理して保存する仕組みです。
最も広く使われているのが、表の形でデータを持つ関係データベースです。行が1件のデータ、列が項目にあたります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| テーブル(表) | データのまとまり |
| レコード(行) | 1件分のデータ |
| フィールド(列) | 項目。氏名、住所など |
| 主キー | 各行を一意に識別する項目。重複しない |
同姓同名の人がいても区別できるよう、重複しない番号を割り当てます。これが主キーです。住民番号、学籍番号、社員番号などがこれにあたります。
氏名を主キーにできないのは、同じ名前の人がいるからです。氏名と生年月日を組み合わせても、完全とはいえません。だから専用の番号を用意します。
銀行の振込を考えると分かりやすいでしょう。「Aから引く」と「Bに足す」の途中で障害が起きたら、お金が消えてしまいます。両方が成功するか、両方とも取り消されるか。この単位をトランザクションといいます。
便利さの一方で、個人情報を扱うシステムには重い責任が伴います。
目的外に使わないこと。集めたときに示した目的以外に使うのは、法律で制限されています。
必要最小限にとどめること。住所の確認に家族構成は要りません。渡す情報を絞ることが、そのまま安全につながります。
集約のリスクを理解すること。散らばっていれば問題にならない情報も、1か所に集まると個人が特定されやすくなります。だから、複数のシステムを安易につなぐことには慎重さが求められます。
本人が確認・訂正できること。自分の情報がどう扱われているかを知り、誤りがあれば直せる。これは本人の権利として保障されています。
電子的な本人確認の具体例が、マイナンバーカードです。カードのICチップには電子証明書が入っており、これを使って「本人であること」を証明します。
重要なのは、チップの中にマイナンバー以外の個人情報は入っていないという点です。氏名や住所を証明する必要があるとき、カードは「本人である」ことだけを示し、実際の情報は必要に応じて役所のシステムから取得されます。
また、各機関は同じマイナンバーを共有しているわけではありません。機関ごとに異なる符号を使い、必要なときだけ照会する仕組みになっています。1か所が破られてもすべてが漏れないようにするための設計です。
電子化には利点が多い一方、システムが止まると業務全体が止まるという弱点があります。紙なら手作業で続けられたことが、できなくなります。
そこで、いくつもの備えが用意されます。同じ機器を二重に用意しておく冗長化、離れた場所にデータの複製を置くバックアップ、障害時に切り替える予備システムの準備。金融や行政のシステムでは、こうした対策が欠かせません。
2023年前後には、行政システムの障害や、公金受取口座の誤登録といった問題も報じられました。便利さと確実さをどう両立させるかは、いまも取り組みが続いている課題です。