情報ラボ > 個人情報とプライバシー
どんな情報が個人情報にあたるのかを判定し、写真にかくれた位置情報や、氏名を消しても人が分かってしまうしくみを確かめます。
答えは、個人情報保護法の条文と、個人情報保護委員会のガイドライン・Q&Aにもとづく一般的な考え方です。ここでは、会社などの事業者が扱う場面を想定しています。実際には、だれがどんな情報と合わせて持っているかで結論が変わることがあります。
選んだ画像は、このページのプログラムがブラウザの中だけで読み取ります。インターネットには送信しません。読めるのは JPEG(.jpg)と、Exif が入った PNG・WebP です。HEIC 形式には対応していません。
画像を canvas(ブラウザの描画領域)に描き直して、JPEG で保存し直します。描き直した画像には、もとの Exif は引きつがれません。
データはすべて架空です。郵便番号も、説明のために作った番号です。表の色:k=1(1人に絞り込める) k=2、青い線は中村さんと同じ組み合わせの行です。
これは、しくみを説明するための単純なモデルです。円の内側から「友だち」「友だちの友だち」「知らない人」を表します。実際の人数や広がる速さを予測するものではありません。
「個人情報」と「プライバシー」は、似ていますが、同じ意味ではありません。個人情報は、個人情報保護法という法律で決められた言葉で、生きている人に関する情報のうち、その人がだれか分かる(特定の個人を識別できる)ものを指します。一方、プライバシーは、私生活のことがらを他人にみだりに知られたり、公開されたりしないことを守る考え方で、法律の条文に定義があるわけではなく、裁判の判例の中で守られてきました。
たとえば、友だちの住所は個人情報で、本人に無断で広めればプライバシーの侵害にもなりえます。反対に、だれのものか分からない位置情報のように、それだけでは個人情報にあたらない情報でも、たくさん集まると、その人の生活のようすが分かってしまうことがあります。法律のルールを守ることと、相手が知られたくないと思うことを勝手に広めないことの、両方が大切です。
個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律、平成15年法律第57号)の第2条第1項は、個人情報を「生存する個人に関する情報」で、次のどちらかにあたるものと定めています。
1つめの「他の情報と容易に照合できる」がポイントです。学籍番号と点数だけの表でも、同じ学校が学籍番号と氏名の名簿を持っていれば、照らし合わせてだれの点数か分かるので、学校にとっては個人情報です。また、新聞やSNSなどですでに公開されている情報も、個人情報であることに変わりはありません。なお、亡くなった人の情報は法律の「個人情報」にはあたりませんが、それが遺族に関する情報でもある場合は、遺族の個人情報になります。
第2条第2項の個人識別符号は、それ1つで特定の個人を識別できるとして、政令(個人情報保護法施行令第1条)と規則で決められた符号です。大きく2種類あります。
携帯電話の番号やクレジットカードの番号は、個人識別符号に入っていません。契約のしかたがいろいろで、どんな場合でも特定の個人を識別できるとは限らないからです。ただし、氏名などと照合できれば、全体として個人情報になります。
第2条第3項の要配慮個人情報は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実など、知られると差別や偏見などの不利益につながるおそれがあるため、特に慎重な扱いが必要な個人情報です。施行令第2条では、障害があること、健康診断などの結果、医師の指導・診療・調剤を受けたこと、逮捕などの刑事事件の手続きを受けたこと、少年の保護事件の手続きを受けたことも加えています。要配慮個人情報は、法令に基づく場合などを除いて、あらかじめ本人の同意を得なければ取得できません(第20条第2項)。
ただし、「ある宗教の本を買った」という記録だけでは、信条(信じていること)なのか、単に調べものをしただけなのか分からないので、それだけでは要配慮個人情報にはあたらないとされています(個人情報保護委員会 Q&A 1-27)。
「1年生は男子120人、女子115人」のような統計情報は、特定の個人との対応関係がない限り、個人情報ではありません。また、Cookie(Webサイトがブラウザに保存させる小さなデータ)を通じて集めた閲覧の履歴や、だれのものか分からない位置情報などは個人関連情報(第2条第7項)と呼ばれ、それだけでは個人情報ではありません。ただし、位置情報が連続して積み重なり、特定の個人が分かるようになれば、個人情報になります。
個人情報を検索できるように整理した集まり(個人情報データベース等)を事業に使っている者を個人情報取扱事業者といいます(第16条第2項)。ガイドラインでは、営利か非営利かを問わず、扱う人数が少なくても、法人ではない団体や個人でも当てはまるとされています。国の機関や地方公共団体などには、同じ法律の第5章「行政機関等の義務等」のルールが別に定められています。個人情報取扱事業者のおもな義務は次のとおりです。
| ルール | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 利用目的の特定 | 何のために使うかを、できる限り具体的に決める | 第17条 |
| 利用目的による制限 | 本人の同意なしに、決めた目的に必要な範囲をこえて使わない | 第18条 |
| 不適正な利用の禁止 | 違法・不当な行為を助長したり誘発したりするおそれのある方法で使わない | 第19条 |
| 適正な取得 | うそや不正な手段で取得しない。要配慮個人情報は原則として本人の同意が必要 | 第20条 |
| 利用目的の通知・公表 | 取得したら、利用目的を本人に知らせるか、公表する | 第21条 |
| 安全管理措置 | 漏えい・滅失・毀損を防ぐ対策をとる | 第23条 |
| 漏えい等の報告 | 本人の権利利益を害するおそれが大きい漏えいなどが起きたら、個人情報保護委員会に報告し、本人に知らせる | 第26条 |
| 第三者提供の制限 | 法令に基づく場合などを除き、本人の同意なしに他の人や会社に渡さない | 第27条 |
| 本人からの請求 | 本人は、自分のデータの開示や、利用の停止・消去などを請求できる | 第33条、第35条 |
2022年(令和4年)4月1日に全面施行された改正(令和2年改正)で、漏えい等の報告と本人への通知が義務になりました。個人情報保護委員会規則第7条は、報告が必要な場合として、①要配慮個人情報がふくまれる、②クレジットカード番号のように、不正に使われると財産的な被害が出るおそれがある、③不正アクセスなど、不正の目的による、④本人の数が1000人をこえる、の4つを定めています。ガイドラインでは、事態を知ってからおおむね3〜5日以内に速報し、30日以内(③の場合は60日以内)にくわしい報告をするとしています。
データを分析に役立てながら個人を守るために、法律は2種類の「加工した情報」を定めています。
| 仮名加工情報(第2条第5項) | 匿名加工情報(第2条第6項) | |
|---|---|---|
| 加工のしかた | 氏名などを削除したり置きかえたりして、他の情報と照合しない限りだれか分からないようにする | だれか分からないようにし、さらに、もとの個人情報に復元できないようにする |
| 他の会社などへの提供 | 法令に基づく場合などを除き、できない(第41条第6項、第42条第1項) | 本人の同意がなくても、決められたルールの下でできる。ふくまれる項目などを公表する(第43条第3項・第4項) |
| 本人を識別する行為 | 禁止(第41条第7項) | 禁止(第43条第5項) |
仮名加工情報は、令和2年改正で新しくつくられました。匿名加工情報をつくるときは、氏名や個人識別符号を削除するだけでなく、「年齢116歳」のように数人しかいない特異な記述を削除するなど、個人情報保護委員会規則第34条の基準に従って加工しなければなりません。単に氏名を隠しただけのデータは、匿名加工情報ではなく、個人データのままです。
「匿名にしたつもりでも…」で確かめたように、氏名を消しても、郵便番号・生年月日・性別のような情報の組み合わせで、1人に絞り込めてしまうことがあります。アメリカの研究者ラタニア・スウィーニーは、1990年の国勢調査の集計データを使って、5けたの郵便番号(ZIPコード)・性別・生年月日の3つだけで、アメリカの人口の約87%(2億4800万人のうち2億1600万人)が1人に特定できる可能性が高いことを示しました。
そこで考えられたのがk-匿名性です。公開するデータのうち、他の情報と結びつけて人を特定するのに使われうる項目(準識別子)について、同じ組み合わせの人が、どの組み合わせでも少なくとも k 人いるようにする、という考え方です。k=1 の人がいれば、その人は特定されてしまいます。k を大きくするには、年齢を年代に、郵便番号を上3けたにするように情報をおおまかにする(一般化)か、項目そのものを削除します。ただし、おおまかにするほど、データから分かることは少なくなります。
また、k が2以上でも、同じ組み合わせの全員の健康診断の結果が同じなら、その人の結果は分かってしまいます。体験では、中村さんと同じ組み合わせの2人がどちらも「要再検査」になる場面があります。k-匿名性は大切な目安ですが、それだけで安全とは言い切れません。
自分の顔や姿を、勝手に撮影されたり公開されたりしない権利を肖像権といいます。日本には肖像権を直接定めた法律の条文はなく、裁判の判例によって認められてきました。最高裁判所は、1969年(昭和44年)12月24日の大法廷判決で、「何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する」とし、これを憲法第13条の趣旨と結びつけました。また、2005年(平成17年)11月10日の判決では、人はみだりに自分の容ぼう・姿態を撮影されないことについて法律上保護されるべき人格的利益を持つとし、撮影が違法になるかどうかは、撮影の場所・目的・方法・必要性などを総合的に考えて判断するとしました。
プライバシーについても、最高裁判所は2003年(平成15年)9月12日の判決で、大学が講演会の参加申込者の学籍番号・氏名・住所・電話番号を本人に無断で警察に開示したことを、プライバシーの侵害として不法行為にあたるとしました。氏名や住所のような情報でも、本人の知らないところで勝手に渡してよいわけではありません。
写真や動画をSNSに載せるときは、写っている人に先に了解を得ましょう。著作権との関係は著作権と知的財産で確かめられます。
デジタルカメラやスマートフォンで撮った写真のファイルには、画像そのもののほかに、撮影日時、カメラのメーカーや機種、撮影したときの設定などが記録されていることがあります。この記録の形式をExif(イグジフ)といい、カメラ映像機器工業会(CIPA)と電子情報技術産業協会(JEITA)が規格を定めています。2026年10月の時点で最新の版は、2026年1月30日発行の CIPA DC-008-2026(Exif 3.1)です。
位置情報を記録する設定にしていると、GPSなどで測った緯度・経度も書き込まれます。自宅で撮った写真をそのまま公開すると、住んでいる場所が分かってしまうおそれがあります。公開する前に、自分で確かめる習慣をつけましょう。また、Exif を消しても、写っているもの(制服、名札、電柱の住所表示、窓から見える景色など)から場所が分かることもあります。
「写真にひそむ情報」のタブでは、ファイルのバイト列(0と1の並びを8ビットずつ区切ったもの)を JavaScript で読み、JPEG の中の「APP1」という区画に入っている Exif を、このページのプログラムで解析しています。Exif の中は、項目の番号(タグ)・データの型・個数・値が順に並んだ表のようなつくりになっています。ファイルの中身がすべて数値で表されていることは、データはすべて0と1でも確かめられます。
インターネットに投稿した文章や写真は、自分で削除しても、ほかの人が保存したり、画面を撮影したり、別の場所に投稿し直したりしていれば、そのコピーは残ります。一度広まった情報をすべて消すことはとても難しく、入れ墨(タトゥー)が消しにくいことにたとえて「デジタルタトゥー」と呼ばれることがあります。「友だちまで」に公開しても、友だちがコピーして広めれば、その先は自分では管理できません。
自分や友だちの情報が勝手に公開されて困ったときは、まずそのサービスの削除の申し出の窓口を使います。どうすればよいか分からないときは、総務省の委託事業である「違法・有害情報相談センター」などに相談できます。一人でかかえこまず、家族や先生にも相談しましょう。
令和2年改正法の附則では、施行後3年ごとに見直しを検討することが定められています。この見直しをふまえて、2026年(令和8年)7月17日に、新しい改正法(個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律)が公布されました。個人情報保護委員会の資料によると、16歳未満の人が本人の場合に、同意や通知の相手を親などの法定代理人とすることを明文化すること、顔特徴データの扱いのルールを強めること、悪質な違反に課徴金(違反で得た利益に相当する額を納めさせるお金)を課す制度などがふくまれています。施行は原則として公布の日から2年をこえない範囲で、細かいルールはこれから政令や規則で決められます。
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